「家守綺譚」梨木香歩

「家守綺譚」梨木香歩 2004年

一種類ずつの草木がモチーフとなって、涼やかに編まれ、次第に大きなストーリーとして編み広がって行くのだが、冒頭に、「サルスベリに恋をされる(懸想される)」主人公が登場する。彼にそう教えてくれたのは、亡くなった親友の霊だ。そう言われれば、サルスベリの滑らかな木肌を撫でてやるのは気持ちが良く、そうするのが日課となった、と多少エロチックでもある。物書きの主人公は、その気持ちに応えるように、木に本を読んで聞かせると、ものによって、喜びを表したり、嫌がったりと、全くの妄想に過ぎず、奇妙な話だが、すんなりと納得して話に誘い込まれてしまう。
疎水が施された伝統的な日本家屋の床の間に掛かる掛け軸から時折現れる亡くなった親友の霊との会話、同じ親友の霊が飼えと勧めた犬のゴローの話、知り合いの和尚が話す獣や化物の話、隣家の人の良い女将さんの話が草木と一緒に語られる。

南蛮ギセル、ネズ、セツブンソウ、貝母(ばいも)がどういうものなのか、花道をやらなかった私には分からなかったが、どれも、茶室の床の間に一輪飾られそうな名前で、雰囲気がぴったりと合っている。こう言う話が書けたらいいなと思う。