「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL) 村上龍

「わたしは甘えているのでしょうか?」(27歳・OL) 村上龍、2009年

25歳〜35歳前後の女性が発した仕事、恋愛、結婚、生き方などの問いに村上龍が答える形式の本。出版から6年経った今でも、書かれている内容は古くなっていない。

この年代の女性には特有の悩みが怒涛のごとく押し寄せてくる。大抵は、仲の良い女友達とワインを飲みながら、あるいは居酒屋であーだ、こーだと話し合い、結局、何の結論も出せないまま、でも、少しはスッキリして、また、明日を迎える。

答えは自分では分かっているけれども、一応、「バカだな、お前、そんなん考えてるのか。心配いらないんだよ」と誰か、社会的に認められているヒップなオジさんに言って欲しい。時には頭を殴られるような、身も蓋もないような正直な意見も聞きたい。そんな女性からの、一見どうでもいいような質問に、その辺のオジさんの代わりに村上龍が答えている。例えば、

「同じように1万円使うなら、何に使えば『自分磨き』に有効ですか?」

と質問した26歳の図書館司書は、具体的に、「いい女を目指して自分磨きをしているけれども、本と洋服とどっちを買うべきですか?」と聞いている。

村上龍の答えがまとも過ぎて可笑しい。女性が生きる選択肢が増えたことで、自分を磨くとか、能力・知力を高めようとする社会常識が形成されて、それがムードになっているけれども、

「自分を磨くって一体、何なんですかね。毎日、軽石で体をこするわけじゃないですよね。この人は「本を買った方がいい」と言って欲しいのかな」と。本を買っても積ん読では意味がないし、洋服が足りない人は洋服を買った方がいいし」

要はその人にあった有効なお金の使い方があり、それを考えるのが大切だと、至極当たりまえの答え。

でも、女の私からすればその答えは少し的が外れているような気がする。頭脳筋を鍛えて、知力で勝負するのと、見た目を向上させるのとでは、職場、恋愛・結婚市場でどちらが有効か、男性は頭の良い女性と、綺麗な人と、どちらが好きなのかを暗に聞いているのではないだろうか。

上の村上龍のような当たり前の答えだったり、

「昨今は、女医さん、理学博士なんかも、結構綺麗なんだよね」とか、

「男はやっぱ、綺麗な人が好きだからなあ」というような答えは言わずに、

「内面が充実した人が魅力的」と言われたいのだと思う。

村上龍は、彼女が期待している答えを知っていながら、別の聞きたくない答えを言っているようにも思える。全体を通して、「男って女の気持ちが分かんないのね」と愚痴が聞こえそうな解答が多い。別の質問に対する答えも、ほぼ、このような感じだ。同棲していた恋人と別れた26歳の女性が、

「恋愛していなと死ぬほどさみしい。どうしても耐えられません…」

という問いに対して、

一人で生きていけないと言いながら、みんな結構耐えて生きているわけだから、アドバイスのしようがないと言っている。身も蓋もないのだが、もちろん、フォローアップも忘れない。

「さみしくならない方法はある」と感情を別のところに持って行く幾つかの方法を教え、さみしいという感情は不自然ではないと締めくくっている。

職場での悩み、恋愛などの悩みから、社会問題、生き方など話題は広く、読み物としても面白い。