ASA 我が街かわら版 「ひらめが見たテキサス(4)」

テキサスの春は印象派の色
wild flower4月から5月にかけて、テキサスの風景は一張羅の晴れ着を纏ったようになる。冬に雨が多かったせいか、今年は殊に色鮮やかだった。

日本から桜の開花ニュースが届くと、負けてなるまいとテキサスの自然も花を咲かせる準備を始める。桜が薄桃色で空を飾るのに対して、こちらでは青紫のブルーボネット、赤いインディアンペイントブラッシュ、ピンクのピンクプリモローズ、黄色のメキシカンハットなどの野生の草花が一斉に大地を覆う。草を食べる牛が点々とする放牧場の隣は青紫一色のカーペットで覆われ、壊れた機械置き場に使っている農家の庭も印象派の画家を雇って塗り替えたように変わる。

用事があってヒューストンに出かけた、その帰り道のこと。ハイウェイ290を走っていると、突然、花で覆われた平原が現われた。この時期でなければ、そこは誰も気にも留めない、ただの原っぱ。そのまま通り過ぎてしまうのは余りに惜しく暫く走った後、Uターンをして行ってみると、子供連れの家族が写真撮影をしていた。親はきちっとしたポーズの写真を撮ろうと子供にじっとしているように言うのだけれど、子供たちはいうことを聞かず、花を踏み倒しながら踊るように動き回っいる。その瞬間を捉えることができたら、きっと素晴らしい表情をした子供たちの写真に仕上がったことだろう。その家族と私と夫以外には誰もいない、夢のような光景だった。

2016-03-21 16.43.33
私の家族も子供が小さい時にはよく写真を撮りに出かけたものだ。親は1年に1回、咲き乱れるブルーボネットをバックに記念写真を撮りた。しかし、叱られた子供が並んで立っている写真はつまらない。私のお気に入りは当時6歳、4歳、2歳だった3人が黒い長靴を履いて、ピンクプリモローズの咲く小道を光の射す方に向かって歩いて行く後姿だ。彼らは、そのまま、しっかりした足取りで私たちから離れて光の方に歩いて行ってしまった。そんな思い出に浸っている間に、心を躍らせる花の季節が終わり、陽射しは強くなっていく。