映画 Lion ライオン〜25年目のただいま

公開 2016年  監督 Garth Davis 脚本 Luke Davies

A Long Way Homeという題の本がLion という映画になった。日本では「ライオン 〜25年目のただいま」という、パンくんやジェームズも出てきそうな、動物愛情物語のような題になってしまった。

これは虐待された仔ライオンが保護されて育てられ野生に戻されたが、ある日ガラガラと戸を開けて懐かしい人間家族を訪ねてきた映画ではない。むしろ、原題の「長い帰り道」「母をたずねて三千里」的な実話なのである。ライオンというのは母親が名付けた名前Sheruがヒンディー語でライオンを意味するからだが、本人にはSarooと聞こえていたと言う。

インドの小さな町に住む貧しい家族。優しい母親と頼もしい兄、それに妹と暮らす5歳の男の子サルー。母親は石を運ぶのが仕事だ。父親はいない。兄と二人で貨物列車から石炭を盗んだり「お仕事」をして母親を助けている。ある早朝、兄について「お仕事の手伝い」に家を出てきたものの、眠くて起きていられずに駅のベンチで寝ているように言われる、絶対どこにも行くなと念を押されて。しかし、起きた時に兄を探しに停車中の汽車に乗ると、その汽車が動き出してしまう。

これは親の悪夢だ。小さな子供は「ここで待っていなさい」と言われても、それができない。見当たらずに大慌てで探すと大泣きして立っている我が子を発見して安堵するのだが、サルーの場合は家から遠く離れたカルカッタまで来てしまった。路上で暮らし、人さらいから逃げ、収容所のような施設に入れられた後、オーストラリアの夫婦に養子として引き取られる。何の苦労もなく育ち、養父母の愛情に包まれて育ったものの、インドの家族を忘れることはなく、自分を待っているだろうとの思いから家路を探し出す。家を出てから25年が過ぎていた。

アカデミー賞に幾つもノミネートされた心が温まる映画だが、インターネットで見られるSaroo Brieleyのインタビューも興味深い。実在の母親は富からは離れた暮らしをしていたにもかかわらず美しい。帰り道を探すのに使われたGoogle Earthの関係者がどんなに喜んだか想像に難くない。