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2017年Austin Asian American Film Festival

Austin Asian American 映画祭に参加しているドキュメンタリー映画を3本立て続けに観た。と言ってもショートドキュメンタリー部門なので、各々が15分程度の短いものだった。

この短い時間の中にテーマと芸術性を凝縮させて編集するのは骨の折れる作業だっただろう。最近PBSで放映されたKen BurnsのThe Vietnam Warsのドキュメンタリーとは全く反対のものだ。18時間10エピソードでは製作関係者も疲れただろうが、観終えたこちらも疲れ果てた。よく頑張ったと判子を押して欲しいくらいだった。それと比較すると、これらは一瞬の風の便りのようなものだった。

 

 

Jazz Abroad – Director : Yuta Yamaguchi

監督は日本人のYuta Yamaguchi。ボストンのバークリー音楽大学で出会った日本人女性3人のジャズトリオを追ったものだ。タフでしなやかな「超えた」人たちは音楽による一期一会のお互いの会話を聞き手と共有する、という感じだ。

声の代わりにピアノ、ベース、ドラムスがあり、3人のいずれもが音楽を世界の共通語と捉えている。違いは個性、近寄れるし融合できるというメッセージを受け取った。因みにドラムスのMasumi Jonesさんはオースティン在住で、時々Elephant Roomなどで演奏されるようなので、生の声(音)を聞きに行きたい。

Weaver of Imagination – Director: Sadegh Jafari

ペルシャカーペットの精緻なパターンを織り込むのは例え目が悪くなくとも難しいだろう。それを視覚障害を持つ男女のグループが点字を使いながら、想像力を羽ばたかせながら織っていく、その彼らの日常を淡々とカメラが捉えている。

夫も妻も視覚障害の二人が市場でスイカを買うシーンが良い。夫が、

「真っ赤なスイカをくれ。音でわかる」と言って、渡されたものを叩く時のやり取り可笑しい。「友達っていいよね」「神が助けてくれる」と言った小さな言葉は重みがあり、「かわいい」「励まされた」と言う人もいるだろうと思えるシーンが幾つもある。大げさではなく、文句を言うでもなく、好ましい生きる姿がある。3本の映画のうちで最も良かった。

Other – Director: Peter Trinh

静かで文句を言わず権威者に従うアジア人。アメリカで影のような位置にいるアジア人、それでいて差別をされると感じているアジア人の声を綴ったものだ。

日本人は登場しない。余りに少数過ぎてインパクトがないか、「問題意識が低過ぎ」てインタビューの対象にならなかったか、インタビューはしたものの

「別に、差別って同じ人種の中でも起きるし、問題の本質を明らかにする事が大切じゃないかな、本当に人種に起因した法的な問題か、感情的なものなのか」と、テーマの熱気を冷ますような事を言われて編集でカットしてしまったのかな、などと想像した。1〜5点のうち、3点をつけた。

映画「八墓村」– 1977年版は寅さんが金田一耕助を演じた

公開 1977年 監督 野村芳太郎 脚本 橋本忍

持っていることを忘れていたDVD。オープニングは古い羽田空港。

 

 

 

若いショーケンがAGS職員(飛行機を誘導するスタッフ)に扮していて懐かしいと思いながら見ていると、一転して山深い岡山県の村に舞台が移された。いつ怖いことが起こるのかと期待(?)しながら見ると双子の白髪の老女小竹と小梅が古い家で黒い着物を着て座っているだけで不気味だ。その二人が腰を屈めて暗い庭を歩くのも何故か怖い。彼女たちは、AGS職員のタツヤを、この旧家の資産家、多治見家に戻して家を継いでもらおうと画策していた。なぜなら本筋の後継者久弥は病弱で、出戻りの久弥の妹は子供を産めない体だった。タツヤは一応、二人の弟なのだが、誰もがそうではない事を知っている。

タツヤは自分を探している新聞広告を見て、母親の言い残した自分の出生地を知りたいがために、この家に来るわけだが、何故か次々に人が死んで行く(ミステリーでは大抵平和な村で人殺しが起きる)。新聞広告を出した法律事務所に雇われて村に来た探偵が寅さんじゃない、渥美清演じる金田一耕助。この役はてっきり石坂浩二だと思っていたので、ちょっとがっかりした。寅さんのイメージを振り払って、渥美金田一に慣れるのに少し時間がかかった。今更、私があらすじを説明するまでもなく、この多治見家を含めた八つ墓と呼ばれる村の「祟り」と、その「祟り」を盲信する人々を操る人がいることを金田一耕助が解いていく。気が触れた山崎勉の演技は迫力がある。

そこで古いDVDをしまって忘れてしまえば、それでお終いだったのだが、登場人物の関係がすっきり分からないので「おさらい」をしようと思ってインターネットで「八つ墓村」とキーワードをインプットすると、私の知らなかった「津山事件」と呼ばれる1938年に起きた陰惨な事件が上がってきた。原作者の横溝正史は岡山県で実際に起きた30人もの死者が出た、この事件を元に本を書いたのだという。

過去の事件を今知ったからと言って何の役にも立たない。が、小さな村で孤立していた若者が精神を病んで村人を殺して最後に自分も死んでしまい、何故そうしたのか?は誰も分からないのは、アメリカで何度も起きている銃乱射事件と共通性がある。つい最近、2017年11月5日にテキサスのSoutherland Springsという人口600人程度の町で起きた銃乱射事件も死者は26人に上り、本人は最後に自殺してしまった。そのため、乱射した理由は永久に分からない。

日本は昔、平和だったと思い込むのは間違いで、私たちが知らずに済んだだけなのかもしれない。また、人を孤立に追い込むのは、コミュニティーとして後味が悪いだけじゃなくて、大きなリスクを伴うことになるのは、いつの時代でも、どこでも同じだ。

 

映画 Temple Grandin (テンプル・グランディン)

自閉症の内面を見せた映画。公開 2010年

2004年くらいだったか、Temple Grandinが家畜に優しい屠殺施設を設計した、そのいきさつを出版したときには話題になった。

それはテーマが変わっているだけでなく、自閉症の視点を使って設計したからだった。また、それは、成功した自閉症の人が社会に向けて内側から声を発して、その視点を明らかにして見せたことが大きかった。それ以来、彼女は自閉症全体の代弁者となっている。

自閉症と聞くと、普通、全く人との関わりを絶って、自分一人の世界に閉じこもっている姿を想像する。ダスティン・ホフマン演じたRain Manのような人。けれども、Templeの場合はHighー Functioningと種類わけされている。自閉症と診断されてもそれは一様ではなく、重い人から、軽い人まで様々で、彼女によれば科学者やテクノロジー関係者の多くは程度の差こそあれ自閉的でFacebookの創立者は典型的だという。

彼女は牧畜業界ではセレブ的だし、世界を回って講演もする有名人で、とても問題のある人には見えない。ところが、彼女は4歳まで言葉を話さず、あばれまくり、感情の交換がなく、自分の世界に閉じこもっていたのだそうだ。お医者さんは「これは自閉症というものです。治療法はありません。施設に入れるしかありません」と、ハーバードを出た母親に断言する。1950年前半のことだ。

学校に馴染めず、みじめだった彼女がどうして博士号まで取れたかというと高校時代の理科の先生が素晴らしかったからだ。NASAを退職してTempleの高校で理科を教えていた先生が彼女の能力を見抜き励まして、後押ししてくれたからだ。

結果、自分の好きな「家畜」と関わる研究に進むのだが、研究では動物の目を持って家畜の行動を捉えていることが大きな特徴だ。

牧場の地べたに寝転んで牛たちが寄ってきて頬っぺたを舐めたりするのを平気でさせているビデオを観たが、映画の中でもそういうシーンがある。Clair Danesも実際そうしたのだろうか。何頭もの牛の顔を下から見上げて、リラックスしていられたのだろうか。オースティン近くの、BastropやSmithvilleで映画を撮影したので、そのあたりの牧場育ちの女の子をスタントとして使ったのだろうか。

Templeが大学を卒業し、修士、博士の道を進めたのは、高校時代の先生の励ましだけでなく、自分で作った「リラックスマシーン」があったからだ。彼女はストレスを受けたときには自分の体を締め付けるとリラックスできるのをおばさんの牧場で体験している。ストレスに満ちた大学生活を何とか続けるために寮で締め付けボックスを作り上げて、周囲を説得して使わせてもらう。

彼女の興味はつきない。