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Austin, Texas – 忙しいけれど焦らない。イライラしない。

Oak Hill Post Office from Wikimedia Common

「それで、僕は78年(1978年)に卒業したんだけどさあ」とのんびりとお客と会話をする白髪の郵便局職員。一年で今が一番忙しい時期だ。会話をしながらお客さんが持ち込んだ山のようなパッケージを次から次に処理している。会話の相手の女性は笑って聞いている。

列は長い。皆静かに待っている。私は待つことを予想して本を持ってきていた。番が回ってくると、

「辛抱強く待ってくれてありがとう」と言った。

「お待たせして申し訳ありません」ではない。

「これの中身は本、こっちは中国行きの本」とカウンターに次々に幾つかの封筒を乗せると

「と、も、こ。日本人だよね」

「よく分かったわね〜 とみ子が多いんだけど、時にはトマトって言われることもあるのよ」と言うと、

「アメリカ人は何も知らないからなあ。僕は俳優のTakashi Shimura (志村喬)が好きなんだよ。音で何となく日本語かどうか分かるんだ」

彼はクロサワ映画の「七人の侍」より何より「生きる」が好きで、見るたびに泣くという。ゴジラの話にもなった。そんな会話を6、7分、郵便物を計量したり、郵送料を説明したり、スタンプを貼りながら話した。全てが終わると” Have a good afternoon!”と言って別れた。長い人の列に焦ることもなく、淡々としてお客の相手をしている。イライラした顔の人もいないが、ことによると、黙りつつもYelpのようなソーシャルメディアで低い星をつける人がいなくもない。まあ、いないだろうな。そういう場所だ。

 

 

 

 

 

Austin, Texas – 「Street」 という名前の日本食レストラン

Streetに飾られている着物

「オースティンで一番美味しい和食レストランはどこですか?」と1990年にこの街に引っ越してきて以来、何度も聞かれた。答えるのは難しい。初めは、あーだ、こーだ言うほどレストランがなかった。 それが、最近はショッピングセンター毎に、寿司バーがあり、ラーメン屋さんなどもできて、「オースティンで一番美味しい和食レストラン」を探そうとしたら、毎週3、4回は食べ比べしないといけないほど増えたため、「私の好きなレストランは、、、」と答えている。

当初は「武蔵野」と答えていた。日本人板さんもいて、テキサスで有名な高級「日本食レストラン」UCHIを展開するTyson Coleが修行した場所として知られている。

「しょうゆのつけ方が悪い」とか、「割り箸をそうやって割るな!」とお客さんに講釈した気難し気な職人肌の板さんもいた。

ずっと行かずに遠ざかっていたのだが、久しぶりに訪れたら、Streetという看板がかかっていた。が、日本食レストランだった。

「まあ、いいか」と同行者とドアを開けると、店内のレイアウトはすっかり変わっていて、中央でヒスパニック系のシェフ二人が黒いユニフォームと黒い帽子できびきびと働いていた。気難し気な板さんは最早いなかった。それだけでなく、お客さんも白人ばかりで、アジア人は私一人。

最近低糖食にしていることもあり、焼酎をメニューに見つけて試そうとすると置いていなかった。獅子唐は「ほらよっ!」と丼一杯に入れずに、串に刺して、しいたけも、鰻も串に刺して焼いていた。酢の物には大葉が飾られていた。シェフはきっと、武蔵野で長いこと働いて、店を持ったか、任されているのかもしれない。味はまずまずだった。これ、何だろう?と思えるタレに浸かったハマチには赤っぽいハラペーニョの輪切りが乗せられていた。和食もローカルの味に変わってきているのだろう、あの、みっちりと具の詰まった、マヨネーズのかかった太巻きのように。

サバの握りを頼むと、「ごめんなさ〜い、サバはないけど、シマアジはどうですか?」と提案したウェイトレスはどうも日本人らしく条件反射のように「はい」と応えてしまうのだが、初めから終わりまで英語だけで通した。

映画「八墓村」– 1977年版は寅さんが金田一耕助を演じた

公開 1977年 監督 野村芳太郎 脚本 橋本忍

持っていることを忘れていたDVD。オープニングは古い羽田空港。

 

 

 

若いショーケンがAGS職員(飛行機を誘導するスタッフ)に扮していて懐かしいと思いながら見ていると、一転して山深い岡山県の村に舞台が移された。いつ怖いことが起こるのかと期待(?)しながら見ると双子の白髪の老女小竹と小梅が古い家で黒い着物を着て座っているだけで不気味だ。その二人が腰を屈めて暗い庭を歩くのも何故か怖い。彼女たちは、AGS職員のタツヤを、この旧家の資産家、多治見家に戻して家を継いでもらおうと画策していた。なぜなら本筋の後継者久弥は病弱で、出戻りの久弥の妹は子供を産めない体だった。タツヤは一応、二人の弟なのだが、誰もがそうではない事を知っている。

タツヤは自分を探している新聞広告を見て、母親の言い残した自分の出生地を知りたいがために、この家に来るわけだが、何故か次々に人が死んで行く(ミステリーでは大抵平和な村で人殺しが起きる)。新聞広告を出した法律事務所に雇われて村に来た探偵が寅さんじゃない、渥美清演じる金田一耕助。この役はてっきり石坂浩二だと思っていたので、ちょっとがっかりした。寅さんのイメージを振り払って、渥美金田一に慣れるのに少し時間がかかった。今更、私があらすじを説明するまでもなく、この多治見家を含めた八つ墓と呼ばれる村の「祟り」と、その「祟り」を盲信する人々を操る人がいることを金田一耕助が解いていく。気が触れた山崎勉の演技は迫力がある。

そこで古いDVDをしまって忘れてしまえば、それでお終いだったのだが、登場人物の関係がすっきり分からないので「おさらい」をしようと思ってインターネットで「八つ墓村」とキーワードをインプットすると、私の知らなかった「津山事件」と呼ばれる1938年に起きた陰惨な事件が上がってきた。原作者の横溝正史は岡山県で実際に起きた30人もの死者が出た、この事件を元に本を書いたのだという。

過去の事件を今知ったからと言って何の役にも立たない。が、小さな村で孤立していた若者が精神を病んで村人を殺して最後に自分も死んでしまい、何故そうしたのか?は誰も分からないのは、アメリカで何度も起きている銃乱射事件と共通性がある。つい最近、2017年11月5日にテキサスのSoutherland Springsという人口600人程度の町で起きた銃乱射事件も死者は26人に上り、本人は最後に自殺してしまった。そのため、乱射した理由は永久に分からない。

日本は昔、平和だったと思い込むのは間違いで、私たちが知らずに済んだだけなのかもしれない。また、人を孤立に追い込むのは、コミュニティーとして後味が悪いだけじゃなくて、大きなリスクを伴うことになるのは、いつの時代でも、どこでも同じだ。